蒼の王様、紅の盗賊
子供たちは、その甘さの虜になったのか次々と手を伸ばし
気付いた頃には、袋一杯に入っていたはずのお菓子が、もう半分くらいしかなかった。
そのあまりの早さに、ジルは思わず出かけた制止の声を引っ込めた。
もう....言っても遅いと思った。
「ジルじいちゃん!これ、すっごく甘いよ!おいしいよ!」
半分くらいまで、まるで飢えた獣のように菓子に食らい付いていた子供たちは
心の底から感激したように、キラキラと輝かせた目をジルに向ける。
「そ...そうか。よかったのぉ、お前たち」
そのキラキラした純粋な眼差しに、ジルは怒る気にもなれず
苦笑いで、子供たちに答える。
そしてそれと同時に心の中で、まだ見ぬこのお菓子の持ち主
心から謝った。
────ヒヒーンッ。
目を輝かせ、お菓子の甘さの感動に浸る子供たち。
そんな子供たちを前に、もう笑うしかないジル。
そんな両者の間に流れる空気を、何処からか聞こえてきた馬の嘶きが遮った。
「何?」
「何じゃ?」
その声に、同時にすぐ後ろに居る馬の元を振り向くジルと子供たち。
だが、馬はおとなしく一斉に自分を見返ったジルたちに、不思議そうに首を傾げる。
声も、もっと遠くから聞こえたようだったし
さっきの馬の嘶きは、この馬のものじゃないらしい。