蒼の王様、紅の盗賊
じゃあ....何処から?
その疑問は、その場に居たジルも子供たちも
そして馬までも一緒だったらしく、彼等は一斉に声の聞こえてきたその先を振り返った。
.....ヒヒーンッ。
そして再びの、馬の嘶き。
....そして続く、男の叫ぶ声。
「おい!?
そこ退いてくれーッ!!」
そう。男がこちらに向かって叫んでいた。
馬に乗って、こちらに駆けてくる男が
『退いてくれ』と。
「退いてくれなんて言われても.....無理じゃ」
そう。無理だった。
子供たちはともかく....ぎっくり腰のジルには。
ジルは、遠くからのその叫びに
これから起こるであろう出来事を想像した。
頭の中で繰り広げられる光景は....ついさっき、そうこの馬が自分に突っ込んで来る直前に想像したものと
全く同じだった。
「ねぇ、ジルじいちゃん。退いてくれだってさ?」
子供たちは、無邪気にジルを見上げてそう言ってくる。
.....彼等は、これから起こるであろうことへの危機感を全く持っていないようだ。
....ヒヒーンッ。
馬の声は、もう近い。
それはつまり───馬に乗った男とジルたちが正面から衝突する時が近いことを示していた。
「に....逃げるじゃ、お前たち」