蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
「───あぁ、大丈夫だ.....って此処どこだ?」



馬から落ちたその男は、腰を擦りながら立ち上がる。

そしてハッとしたように辺りを見回して、きょとんとした顔になった。







「......」



男はそのまま辺りを見回し、困ったように頭を掻き乱して

暫く黙り込んだ後、ようやく回転し始めた頭の中でゆっくりと事を整理する。






「.....あの、どうかされましたかな?」



黙り込む男を不思議に思い、ジルはもう一度声を掛ける。




「あ...あぁ、大丈夫。

───で、俺....どうなったんでしたっけ?」



男はジルの呼び掛けに、ハッと現実に返ったように

返事をし、ジルの元を見て、そして訊ねた。






「君、覚えておらんのかね?
今、君は馬から落ちたのだよ。この馬からの」




「馬....」



ジルが指差す方向を、男は見た。
そしてその先に居る馬の姿を見つめて考える。






「.....あーっ!
そうだった!俺はアスラのとこに行く所だったんだ!

その途中で、あんたたちが見えて止まろうと思って手綱引いたら、馬が暴れて.....」




男は....バルトは、馬を見て一瞬飛んでいた記憶が全て戻ってきたようで
思わず叫び声を上げる。

そして頭の中で思い出されたことを、まるで鉄砲玉のような勢いで一気に口に出す。





 
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