蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
ジルは、詰まる言葉を無理矢理吐き出すように
苦々しい口調で言葉を絞り出した。





「何だ、居ねぇのか....

まぁ、いいや!じいさん。アスラいつ帰ってくるんだ?
アスラが帰ってくるまで待たせてくれよな!」




バルトは、最高潮に達していた気持ちが少しだけ覚めたように
少しシュンとなる。


だが、バルトはジルの言葉の意味を本当には理解していないようで
さっきよりは少しだけ声のトーンを落として、言う。





「......すまんな。いくら待っていても....アスラは帰ってこないよ。

もう───此処には」




まだ言葉の本当の意味を理解出来ていない様子のバルトに

ジルは締め付けられる胸を抑え付けて、今度ははっきりと....明確に言葉を口にした。






「.....どういうことだよ、じいさん?」



今まで顔に笑みを浮かべながら、話をしていたバルト。

だが、ようやくジルの言葉に事の重大さに気が付いて、顔から笑みがスッと消えた。






「.....」



暫く、黙り込むジル。





「なぁ、じいさんッ!

アスラが帰ってこねぇって、どういうことだよ!?
アスラは何処に居るんだ?知ってるのか!?
なぁ、じいさん!?」




ジルの沈黙に、バルトの焦りは高まる。

不安が、積み重なってゆく。






 
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