蒼の王様、紅の盗賊
「それがどうした?
そんなこと、仲間を───アスラを見捨てる理由になんてならねぇさ」
軽く笑みを浮かべて、はっきりとバルトは言い放つ。
その言葉は、何よりも強くて大きな言葉だった。
「じゃあ俺は行くぜ?」
バルトはそう言うと、ジルたちに再び背を向け
そのまま手をヒラヒラと振った。
「あ、そうだ。
もう少ししたら、クロアって言うおっさんたちが来るはずだ。
....そしたら俺が行ったことを、伝えといてくれねぇか?」
そしてバルトは、乗ってきた馬に跨がると街の灯りに向かった。
「.....あぁ、確かに伝えておこう」
そんな姿に、ジルはもはや止めることも出来ずにそう返事をした。
その返事を合図とするかのように、バルトは手綱を引いて
馬は、勢い良く駆け出した。
「頼んだぜ、じいさん!」
バルトの叫んだその声は、どこまでも高く広がる空に
儚く、そして虚しく消えていった。