蒼の王様、紅の盗賊
だがそれはあくまで他の国での話である。
........。
残念なことに、この国は訳が違う。
罪人は男女や年齢理由問わずに重い罪が科せられる。
―――。
その大抵が見せしめとして観衆の前で裁かれる。処刑される。
正義の名の元に正当化された殺人が行われる。
この国で罪を犯し、捕まった罪人で死から免れた者は数える程に少ない。
奇跡。
そう言っても、決して過言ではなかった。
「.....まぁ、どうするにしても急がなきゃなんねぇってのは変わらないか」
頭の中で暫く考えを交錯させてバルトは結局いい考えが浮かばない自分を嘲るように笑いフッと息をつき呟くように言った。
ッ。
バルトはそんなことを考えつつ人混みを擦り抜けてどんどん前へと進む。
さすがは盗賊。
身のこなしは普段の頼りなく歳の割には子供っぽいバルトとは一変一流の盗賊であった。
そしてそんな一人前の盗賊であるバルトが今、向かっている先。
それはアスラが捕らえられているはずの城。
そこに向かって一寸も逸れることなく、バルトは歩を勧めていた。
「待ってろよ、アスラ。
今すぐに....そこに行くから」
今のバルトの中には、捕まるという怖さもなければ切り札と呼べる画期的な策もなかった。
ただ、仲間を助けたい。
そんな真っ直ぐな思いだけが、今の彼を動かしていた。