蒼の王様、紅の盗賊
『疾風のバルト』。
それは月読の盗賊団の中でのバルトの別称。
風のように疾く任務をこなす彼の姿に誰が言い出したかは知らないがそんな名前が付いた。
風のように疾く。
そういえば聞こえいいのだが別の言い方をすれば無鉄砲。
後先考えずに、自分の感情のまま真っ直ぐに突き進むのだ。
あまりに無鉄砲すぎて呆れることもしばしばだが、このバルトの機動力が時にピンチを助けることもあるので悪くは言えない。
........。
そして何よりバルト本人が「かっこいい!」などと言ってこの呼び名を気に入っているので
皆は未だ彼をそう呼ぶ。
バルトの取り柄は、今では珍しい程の真っ直ぐな心。
その真っ直ぐさは、彼の長所でありまた短所であり彼そのものだった。
────ッ....。
人が行き交うアーケードを抜け、辺りには一変静まり返った空間が広がった。
聞こえるのは、遠くに聞こえる人々の騒めきだけ。
ッ。
ここからは城へと続く一本道。
気を引き締めて行かねばすぐに城の衛兵に見つかる。
もしそこで怪しまれてバルトまで捕まってしまえば元も子もない。
───。
失敗は許されない。
「───。
よし、行こう」
バルトは自分自身の背中を押すように、そう一声掛けるとまたゆっくりと前へと進み始めた。