蒼の王様、紅の盗賊
城に紛れ込んだ盗賊、バルトは腕を組んで小さく唸る。
右を見て、左を見て.....そしてやっぱり右を見て、バルトは首を捻った。
「.....どっちに行こうか?」
初めて入る、この蒼の王様と恐れられる王の城の中。
そんな場所で道が分かるわけはない。
無論、目的地の地下牢の場所も全く分からない。
自力で捜すしかないのだ。
バルトの右側の道は、暗くて先がよく見えない。
身を隠しながら行くには問題ないが、道の分からない場所で前が見えないのは結構辛い。
左側の道は、城の中からの灯りで視界が明るく先が見通せるが、身を隠して進むには
向いていなかった。
「───どうするか」
どちらの道を進んでもリスクはありそうだ。
「.....よし」
バルトは、もう一回左右の道を確認して首を捻らせると辺りを一瞥して、それからある一点を見つめて視線を止めた。
その視線の先には、一本の....木の枝が落ちていた。
バルトはその見付けた小枝をスッと拾い上げる。
その小枝を暫くの間それを見つめて、そして。
────カタンッ。
少し体を屈めて、小枝の先を地面に付けると、そのまま手を放した。
小枝は小さな乾いた音を立てて、地面に倒れる。
その小枝の倒れた先を、バルトは静かに見据えた。