蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
そして思わず零れる、そんな言葉。




『死ぬわけにはいかない』

彼女の口から、初めて『死』という言葉が出た。




死。

それは人間が、この世で最も恐れること。
それは自分という存在と、世界の分かれ。


そしてそれは
誰もに平等に訪れるもの。





いつ、誰がどんな理由で死ぬかなんて、そんなこと誰も知らない。

それを決めるのは、運命。そうでなければ神の気紛れだ。




いつ死ぬか、分からない。

だからこそ、人は懸命に生きるのだとアスラは思う。






(人がいつ死ぬかなんて分からない。それは、私だって同じことだ。

......もしかしたら私にとって明日が、その『死ぬ時』なのかもしれない)




それが運命だとしたら、人は.....アスラは受け入れるしかない。
逃げられない、定めなのだから。







(......だけど、だけど私は死ねないんだよ。

この心に誓った目的を果たし、やり遂げるまでは)





だけど、アスラには死ねない理由があった。


もちろん死ぬのが恐い。
そんな思いもあったが、それ以上に死ねない理由があった。





それは、いつの日か心に誓ったことを果たすこと。
仲間と誓った約束を遂げること。



仲間。それは同志。
共に誓いを立てた、月読の約束を。






 
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