蒼の王様、紅の盗賊
〜5〜






タッタッタッタタタッ.....。



廊下を掛ける音。

軽やかに、ほとんど聞こえないくらいのその足音が
廊下の壁に反響して、微かに空気を震わせる。








(急げ、急げッ!)




どこまでも続く、一本道の廊下。
壁には、数えきれないくらいの扉があってこの建物の広さを物語る。


そんな廊下を、静かに掛ける侵入者.....つまりバルトは
この城の広さに、若干の焦りを感じていた。






(ったく、何処なんだ!アスラが居るって場所は!

急がなきゃいけねぇってのに、全然見つからねぇッ!)




バルトは侵入者。
ゆっくりしている暇もなければ、誰かに道を聞くわけにもいかない。


頼れるのは、勘のみ。
何とも頼りない。





(.....急がねぇと、取り返しがつかないことになる)




時は待ってくれないんだ。

このままアスラが見つからずに、この夜が明けてしまえば恐らくアスラは処刑される。



蒼の王様に。悪を何処までも嫌う王様に。

そして何より、世界を知らない王様に。






(.....俺たちはそこら辺の、自分たちの欲に塗れる奴等とは違う。

この腐った世界を戻すために、本当に平和だと胸を張れる世界にするために
自分達を犠牲にしてまで、働いてんだよ)




無我夢中で、アスラへと続く道を捜すバルトは
唐突に立ち止まり、手のひらに力を込める。







 
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