蒼の王様、紅の盗賊
「アスラ....ッ!」
バルトは歌声に導かれるように、城の中を駆け出す。
歌が聞こえるのは、この長く続く廊下のずっと先。
つまり、その先にアスラが居る。
逸る気持ちを抑え、辺りを警戒しながらゆっくりと、だが確実に歌声へと近付く。
さっきよりも歌声が近くなった。
それは、バルトの求めるものが....もうすぐ近くに迫っていることを示していた。
「.....階段だ」
長い廊下の最終地点。
その廊下の突き当たりにあったのは、先の見えない暗い階段。
それは、地下へと続く階段だった。
(確かアスラは.....地下牢に容れられてるはずだったよな?
じゃあ、アスラはこの先に――――)
歌声が聞こえるのは、この地下へと続く暗い階段の先。
......もう、行くという以外の選択肢はなかった。
「......」
バルトは改めて気を引き締めて、深く息を吸った。
そしてバルトは、そのまま階段を飛ぶように駆け降りる。
もうこの先にアスラが居るという確信が、彼にはあった。
だから、彼は駆けた。求める人の元へ。
階段の先は、暗くて見えない。
だが、そんなことはお構い無しに闇を切った。
もう前が見えないことなんて、バルトには問題ではなかった。
ただ流れ続ける歌声だけが、道しるべ。
――――そして彼は、歌声の元へと辿り着いた。
そこには、さっきまで聞こえていたはずの歌が
まるで幻だったかのように、静かすぎる空間が広がっていた。