蒼の王様、紅の盗賊
〜6〜





冷たい地下牢。
孤独な地下牢。


闇と少しの月明かりが支配するこの空間で、アスラはいつの間にか
浅い眠りに堕ちていた。





彼女が見ている夢。

それは今彼女が居る現実と同じ、暗くて孤独に満ちた夢だった。




ボロボロになった建物。

夢の中に居るはずなのに、血生臭いの匂いが鼻の奥を刺激する。


ひらひら揺れる白いカーテンには、ぽつりぽつりと赤色の斑点。
それは真っ白な壁にも広がっていて、赤と白の世界を創り出していた。




そして、そんな赤と白の世界の中で一人
幼い少女が泣いていた。

.....床一面に散らばる赤色と、もう動かない人形と化した人間の上で。




.....少女が愛した、両親の上で。








そう。

これは、悪夢。
どうしても忘れられぬ、記憶の奥深くに刻まれた.....決して消えることのない闇。




忘れたい。
消し去ってしまいたい。

だけど、忘れられない。忘れてはいけない記憶。






(......嫌...)



消え去らぬ悪夢の中で、アスラは.....夢の中で泣く少女は藻掻いた。


鮮明すぎる夢。
早く覚めてくれ、そう願った。



だが無情にも、その鮮明すぎる夢は
より色を濃くして、尚広がり続ける。

悪夢は、覚めない。





(やめて―――....)



夢の中で泣く少女。
その姿を見ていられなくなって、アスラは目を閉じた。







 
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