蒼の王様、紅の盗賊
―――――カツンッ。
音のない世界。
ただ漠然と、哀しみと苦しみが広がるその世界に
唐突に音が響いた。
それは、足音のようだった。
カツンッ....カツンッ。
――――カッ。
その足音はゆっくりと大きくなり、すぐ目の前まで来ると静かに止まった。
「――――何だ、まだ生きて居られたのですか」
足音が止まって、その後に聞こえてきたのは
そんな若い男の声だった。
冷酷な、感情の全く籠もらない声が頭の上から降り注がれる。
「―――――何故.....何故、父上を....母上を、皆を裏切ったッ!」
泣いていた少女が、その男に向かって叫ぶ。
とても幼い少女から発っせられているとは思えない、恨みと憎しみが籠められている声だった。
「聞いてどうするのです?
もうすぐ消えゆく、その身で」
少女の言葉に、再び男の声が響く。
無感情だった声に、嘲るような笑みを含ませて。
「.......裏切り者」
何かを言おうとしたが、言葉では言い切れなくて
ただ一言、少女はそう感情を押し込めて言い放った。
裏切り者。
そう。
今のこの状況は、全てこの男の裏切りのせい。
この裏切りのせいで.....少女は、何もかもを失った。