蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
兵たちは、近付いてくるその影を横目で密かに追い掛ける。




今、兵たちは此処に任務の失敗を伝えに来た身。

王が、そのことを腹を立てれば―――彼等はどうなるか分からない。




主従関係は、理不尽なまでに主人の意向によって従う者は左右される。
だから絶対に、従う者は常に主人の機嫌を伺い気遣わなければならない。


近付く王の影に、妙に速く脈打つ心臓を抱え兵たちは一つ息を呑む。







────カツッ...カッ。



足音が、彼等の目の前で止まる。

そんな王の姿に、兵たちは下げていた顔をゆっくりと上げて主人である者の顔を見た。




長い銀色の髪。
全てを見透かすような、蒼い瞳。

その両方を持つ、王としてはまだ若過ぎる程にまだ子供の面影のある青年がそこには立っていた。





「───シュリ様、本当に申し訳ありません。
....どんな罰も受け入れる所存でございます」




兵たちは、その青年を―――王を前に深々と頭を下げる。
まるで地面に頭を擦り付けていまう程に、それはもう深く頭を下げた。





そう。

先程から感じていた、何か分からぬ違和感は大の大人の兵が頭を下げる。
敬語を使い王として崇める相手が.....まだ年端も行かぬ青年だったからかもしれない。




 
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