蒼の王様、紅の盗賊
アスラの叫びに、バルトは焦ったように辺りを見回して
シーッとアスラを宥める。
そしてアスラも自分の今の状況を思い出し、慌てて口を塞いだ。
そして一度心を落ち着かせて、もう一度小声で問いた。
「バルト、何でお前此処に居る!?」
「何でって.....アスラを助けに来たに決まってるだろ?」
アスラの問いに、当然のように答えるバルト。
そんなバルトに、アスラはまた声を張り上げそうになった。
「助けに来たって.....お前、此処が何処だか分かってるの!?」
「だから、静かにって!
そりゃ分かってるさ。そこまで俺は馬鹿じゃないぜ、アスラ?」
「分かってるなら、何で来たのよ!?しかも一人で!
バルト....お前、どこまで馬鹿なんだッ!?」
あまりに当然の如く答えるバルトに、アスラは焦ったように言う。
まぁ、焦るのも当然だった。
この蒼の王様の城に、我が身一つで飛び込んでくる盗賊が居るなんて.....誰にだって想像出来やしないのだから。
そんな無謀なこと、普通なら考えられない。
「ば....馬鹿って、俺助けに来たのに.....馬鹿って」
一方、アスラの気も知らないバルトは無駄に『馬鹿』という言葉に傷ついたようで
何やらぶつぶつと呟いている。