蒼の王様、紅の盗賊
そんなバルトを前に、アスラは思い出してしまった。
(そうだった.....バルトは、普通じゃ括れない奴だった.....)
盗賊団の中でも、全員公認のお墨付きのお馬鹿。
計画性がなく、本能のままに生きる男。それがバルトだ。
それを思い出して、アスラは諦めたように縄で縛られて不自由な身体で力を抜いた。
そして一つ溜め息をつくと、再びバルトを見る。
「本当に.....馬鹿だ。
分かっているの?此処はあの蒼の王様の城。捕まったらお前まで――――」
呆れたように言った。
「あ、また馬鹿って.....まぁ、いいや。
とにかく助けに来るのに、理由なんていらないだろ?
俺はアスラのためなら、何でもするって決めてるからな!
さぁ、逃げようぜ?蒼の王様にばれちまう前に」
「逃げるっていっても、どう逃げる?
私は身動きすら取れない。しかもこの広い城の中を見つからずに逃げ切るのは.....無理だ」
アスラが言うことは、もっともだった。
この地下牢まで、誰にも見付からずにバルトがやって来れたのが奇跡。
たとえ盗賊として慣れてるアスラたちとはいえ、城の中を把握出来ていない状態で衛兵にでも見つかれば
この広い城の中、逃げ切れる保証はない。
ましてや、それ以前に
この冷たく聳える鉄格子を越える術がなかった。