蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
そんなバルトを前に、アスラは思い出してしまった。





(そうだった.....バルトは、普通じゃ括れない奴だった.....)



盗賊団の中でも、全員公認のお墨付きのお馬鹿。

計画性がなく、本能のままに生きる男。それがバルトだ。




それを思い出して、アスラは諦めたように縄で縛られて不自由な身体で力を抜いた。
そして一つ溜め息をつくと、再びバルトを見る。





「本当に.....馬鹿だ。

分かっているの?此処はあの蒼の王様の城。捕まったらお前まで――――」



呆れたように言った。





「あ、また馬鹿って.....まぁ、いいや。

とにかく助けに来るのに、理由なんていらないだろ?
俺はアスラのためなら、何でもするって決めてるからな!

さぁ、逃げようぜ?蒼の王様にばれちまう前に」





「逃げるっていっても、どう逃げる?

私は身動きすら取れない。しかもこの広い城の中を見つからずに逃げ切るのは.....無理だ」





アスラが言うことは、もっともだった。


この地下牢まで、誰にも見付からずにバルトがやって来れたのが奇跡。

たとえ盗賊として慣れてるアスラたちとはいえ、城の中を把握出来ていない状態で衛兵にでも見つかれば
この広い城の中、逃げ切れる保証はない。




ましてや、それ以前に
この冷たく聳える鉄格子を越える術がなかった。







 
< 151 / 317 >

この作品をシェア

pagetop