蒼の王様、紅の盗賊
「バルト....お前のことだから、どう逃げるかも考えずに来たんだろう?」
アスラは冷静に考え、バルトに問く。
「う....」
そして図星だったようで、バルトは言葉を詰まらせた。
「....やっぱりな。お前はいつもそうだ。
後先なんて一切考えないで、行動する」
「うぅ....クロアのおっさんと同じようなこと言うなよぉ」
「仕方ないだろ、事実なんだから。
お前の行動には、皆いつもヒヤヒヤさせられるんだ。少しは自覚しろ」
「......はい」
鉄格子越しに交わされる会話。
実を言うと、バルトの方がアスラより一つ二つ年上なのだが
会話を聞く限りは、まるで逆。母と子の会話みたいになっていた。
「......このまま此処に居たら、お前まで捕まる。
私のことはいいから、お前は逃げろ。バルト」
アスラに叱られ、怒られた後の子供のようにシュンッとなっているバルトに
アスラは真面目な面持ちで、そう言う。
「な....ッ!
何言ってんだよ、アスラ!?そんなこと出来るわけ......」
「.....別に私のことを見捨てろと言ってるわけじゃない。
ただ今は一旦逃げろと言っているだけ」
たじろぐバルトに、アスラは静かに言葉を続ける。
その瞳は、捕まっている身とは思えないほど冷静だった。