蒼の王様、紅の盗賊
「......明日、正午に街の広場で私の処刑がある。
その時が、最後のチャンスだ」
「アスラ.....」
「信じている。
だから必ず....私を助けに来い」
まっすぐなアスラの瞳が、バルトを捉える。
紅色に煌めくその瞳は、ため息が出るくらいに.....綺麗だった。
「――――分かった」
真剣なその瞳に、バルトは観念したように短く答える。
だが、その短い答えには
彼の『必ず助ける』という強い意志が籠められていた。
「.....じゃあ、早く行け。
お前が紛れ込んだことに気が付いて、騒ぎになる前に。
バルト....お前の足なら、見付かったとしても今ならまだ逃げ切れる」
渋々逃げることを受け入れたバルトに、アスラはそう言い、フッと微笑んだ。
「バルト.....助けに来てくれて、ありがとう。
じゃあ明日、また」
アスラの見せたその笑みに、バルトは深く頷いて
名残惜しむかのように、もう一度アスラを見ると、そのまま背を向けて
地上へと続く階段に駆け出した。
背中にアスラを感じて、バルトは城の外を目指した。