蒼の王様、紅の盗賊
もう今にも落ちてしまいそうな、その時だった。
頭上から、自分の名を呼ぶ声がした。
「......おっさんッ!」
苦しさを押し込めて、声のする方を見上げる。
そしてその視界に映る者―――仲間のクロアの姿に、思わず顔が綻んだ。
「バルト、これに掴まれ」
そんなバルトにクロアはロープを投げ渡す。
そのロープをどうにか片手で受けとめて、バルトは力を振り絞り自分の身体に括り付けた。
解けることのないように、ロープを歯で噛み締めてグッと結ぶ。
それと同時に、バルトの体力は尽きた。
―――――グッ。
宙に投げ出されるような形になったバルトを、クロアが城壁の上から引き上げる。
引き上げられるバルトの身体はゆっくりと上がっていき、やがてクロアの居る城壁の上に辿り着いた。
「バルト、お前はいつも本当に無茶をする。
いつもハラハラする俺の身にもなってみろッ!」
引き上げられたバルトに注がれるのは、そんな厳しい言葉と痛々しい程のクロアの視線。
「クロアのおっさん....助かったぜぇ.....」
そんなクロアの言葉と視線に、バルトはいつもの何も緊張感のない反省のない声でニカッと笑う。
そのバルトの笑顔に、クロアは諦めたように深い溜め息をつく。
「.....本当に、お前という奴は――――まぁ、いい。
とりあえず今は此処から逃げるのが先決だ。行くぞ」
「うおッ!?縄を引っ張るなっておっさん!?
落ちるだろッ」