蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
端から見れば、立場が逆転したようなこの光景。


そんな光景を醸し出している張本人である、シュリと呼ばれた青年は兵たちを見据え、ゆっくりと口を開いた。






「───顔を上げていい。
悪いのは、お前たちじゃないだろう?悪いのは、悪を糧として生きてる奴等の方だ」




兵たちの不安とは裏腹に、王の声は優しいものだった。

言われる通り、恐る恐る顔を上げて見れば王の穏やかな表情が、こちらに向けられていた。






「で....ですが、我々は奴等を取り逃がしたのです。
この国にのさばる悪を」




予想していたのとは、違う王の対応に兵たちは戸惑う。






「.....お前たちは、よくこの国のために働いてくれている。
一人逃したところで、今までのお前たちの功績が消えることはない。安心しろ」




王は軽く笑みを見せる。

声は淡々としているが、その笑みには微かだが温かさを感じた。






「───お前たちの使命は、奴等.....国を乱す悪の撲滅だ。
まだまだお前たちには、働いて貰わねばな?」



「────はっ!」




王の言葉に、兵たちは胸に手をあてて誓いを示す。


励ましでもあり、また命令でもある言葉。
そんな言葉が、彼等兵士の胸にじわりと染み渡った。




 
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