蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
「お前なら落ちても死なない。
.....あと何度も言うが、まだ俺はおっさんじゃない。

―――ほら、行くぞ」





「.....ひでぇな、おっさん。
―――じゃなくて団長。
まぁ、今は早く逃げる方が良さそうだ。一人で助けを待ってる、アスラためにも」





バルトの言葉にクロアはフッと微笑み、そのまま背を向けて城壁の上から飛び降りた。

その背中を追うように、バルトも未だ侵入者に騒めく城に背を向ける。
そして飛び降りるその前に、小さな声で囁くように言った。






「―――必ず助けに行く」



ザッ。



振り返りもしないで、囁くその言葉。
その言葉は何もない空間にほんの数秒漂い、消えていく。


だがその中に籠められたバルトの強い意志だけは、いつまでもはっきり
バルトの姿が消えても、ずっとその場に残されていた。









 
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