蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
静まり返る夜。

廃墟の影と月明かりを背に、レイアとジル二人の間に沈黙が走る。




言うべきことも言えず沈黙の中に居るジルにとっては、何だかとても居にくい状況。

だがレイアの方は、さして気にする様子もなく廃墟の壁に背中を預けて、夜空を見上げて一つ溜め息をついた。







「......ほんと遅いわねぇ」



見上げた空からは冷たい風が吹きそよぎ、レイアとジル二人の肌を撫でる。

そのひんやりと冷たい感覚は、じんわりと身体に染み渡る。
それは何処か心地よくて、レイアは空を見上げたまま暫らくその感覚に浸っていた。













「......あの人なら、団長なら大丈夫だってことは分かっています。

団長なら、きっとうまくやります。もしものことがあったって....上手く切り抜けられます」




夜風に吹かれて暫らくして、レイアはさっきよりも幾分か落ち着いたような声で
ぽつり呟くように、言葉を溢した。


先程とは違うそんなレイアの言葉に、独り言かと思ったがジルは何も言わないまま耳を傾けた。










「団長は強い心を持った人.....でもだからこそ、心配になるんです。

あの人は仲間のためなら、何だってやる。自分の身も顧みたりしない。
.....特にあの子―――アスラのためなら」








 
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