蒼の王様、紅の盗賊
「.....俺はただ、アスラを助けるために動いただけだ。
俺には後先なんかを考えるより、アスラを助けることが一番大事なんだよ」
抵抗を止め、おとなしくなり頭を下げるバルト。
そんなバルトは暫らく黙り込み、そして頭を下げたまま彼にしては静かで真面目な声で呟くように言う。
それは彼の本当の気持ちであり、嘘偽りない言葉だった。
「そうだとしてもだ。
そう思っているのは、お前だけじゃない。
だがな、行動というのは少し誤れば全てが台無しになる。為せることも為せなくなるんだ。
.....何も考えずに行動するのは、周りに迷惑を掛けるだけだ」
「......ッ」
バルトの言葉を、クロアが静かに制す。
クロアはバルトの隣で頭を下げたままバルトの方は見ず、ただ下に見える土の地面を見つめていた。
「.....お二人とも、顔をお上げ下され」
自分に頭を下げ続けるそんな二人。その姿と彼等の言葉に、ジルはそう声を掛ける。
「はい....」
ジルのそんな声に、クロアの手に込められた力は抜けクロアとバルト、二人は同時にゆっくりと顔を上げた。
「貴方たちが頭を下げる必要など、どこにもない。
何も出来ず、ただ見ていることしか出来ない無力な私に比べたら―――そこの青年は、十分立派じゃよ」