蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
ジルは顔を上げた二人、そしてその後ろにいるレイアを見て、そう言葉を続けた。

その言葉を発するジルの瞳。そこには哀愁....悔恨、そして己に対する情けなさが入り交じっていた。








「アスラは.....アスラは助けられなかったようですな。此処に、あの子が居らぬということは」



「......申し訳ない」



「いや、貴方たちを責めるつもりは微塵も持っておらんよ。
何も出来ず此処に居て無事を祈るしか出来なかった私には、責める権利もない」




ジルの口調は、穏やかだった。
だがそれでいて、やはり計り知れない程の哀愁を、そして悔恨を帯びていた。







「......。
安心して下さい―――アスラは、必ず助けます。どんなことをしてでも、必ず」



ジルの言葉の中にある憂愁。何も出来なかった己を責める悔恨。
それを感じ取ったクロアは静かに、でもしっかりとジルを見据えて口を開いた。



自分の言葉に追い討ちを掛けるように放たれた二度目の『必ず』。
その言葉は、クロアの決して曲げられない意志の表れだった。








「.....頼みましたぞ」


「任せておいてください」



クロアとジル。
そしてバルトとレイア。

アスラを想う者たちの重なり合う視線。そしてその想いが澄んだ夜空の元に、きらり煌めいた。








 
< 167 / 317 >

この作品をシェア

pagetop