蒼の王様、紅の盗賊
だから私は例え世間に軽蔑されようとも、それに耐えてきた。
自分を犠牲にしてまで、今まで生きてきた。
そのはずなのに。
今、私の目の前にあるのは処刑台。私の命を断つために築き上げられた忌まわしき建造物。
私の命が断たれるその時が来るのを、今か今かと待ち構えているように広場の民衆の真ん中に聳え立つ。
「さっさと歩け!」
「―――ッ」
そんなことを考え一瞬立ち止まった私に、容赦なく衛兵の蹴りが飛ぶ。
蹴られたその衝撃に、拘束私の身体が持ちこたえるはずもなく無様に地面に傾れ込む。
大勢の人の前。
その前でこんな無様な姿を見せることは、とんでもない侮辱だが今の私にはそんなことを考えることすら馬鹿馬鹿しく思えて、そのまま何の抵抗もせずに暫らく倒れ込んだ。
「立て!」
そんな私の頭上から、また罵声が飛んだ。
まったく、自分で倒しておいて立てとは何事だ。
普通なら手の一本でも差し伸べるべきではないか?
なんて一瞬思ったが、今から処刑される罪人の身がそんな人並みに扱われる身分ではないことに気が付き、私は心の中で笑った。
―――ッ。
せめてもの抵抗で衛兵をギッと睨み付け、拘束されて自由の利かない身体を無理矢理捻曲げて、私は自力で立ち上がる。