蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
人を見下すような声が、私に向けられ発せられる。





「......何が下賤だ。
お前のような奴に....下賤呼ばわりされたくはない!
お前のような奴にッ!

レストォオッ!」




私は我を忘れてレストに叫んだ。

狂ってしまったかのように、私の感情に歯止めが利かなくなる。
瞳の中に映ったレストの姿に、私は自分の今の立場さえも忘れていた。






「貴様、レスト様に向かって何をふざけたことをッ!」



衛兵がレストへと飛び掛かろうかという勢いで叫ぶ私の身体を押さえ付ける。
叫び声に、周りに居た数人の衛兵も私の制止に加勢する。


だが私は四、五人の男に取り押さえられても尚、レストに叫び続けた。込み上げる感情が....私の中の忌まわしき記憶が、私を止めさせてはくれなかった。






「離せっ!離せぇっ!」


無我夢中で暴れる私に、民衆の騒めきが大きくなる。
皆が私を何か危ないものを見るような視線で見ているのを、抑えられない感情と意識の中で何となく感じ取った。




「離せっ!」


それでも私は取り押さえる衛兵たちの腕の中で藻掻き叫ぶ。








――――ッ。

騒めく民衆。叫ぶ声。
様々な動揺がごった返す中、ユラリと蒼い影が立ち上がった。

そしてその蒼い影は、騒めき立つ空間を見下ろし、冷静な声でこの騒めきを制す。






 
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