蒼の王様、紅の盗賊
「―――静まれ。
自らの死を前に足掻くなど、見苦しい真似はするな」
張りのある燐とした声。
そして見下ろす蒼い瞳の影。
狂ったように叫んでいた私はその声にハッと我に返ったように、その声の先を見上げる。
私だけじゃない。
この空間に居る全ての者が、同じ場所を見ていた。
「死を目の前に気が狂ったか。見損なったぞ、紅の盗賊。
たとえ悪とはいえ、最後くらいは人らしくなれないのか」
冷静、そして冷酷な瞳で私たちを見下ろす影―――今まで静観していたシュリが静まった空間に言葉を続けた。
私の叫びと騒めく人々で熱気を帯びていた空気が、一気に下がった気がした。
私の頭に上った血もスゥーッと引いていく。
私を抑えていた衛兵たちの力がシュリの言葉に少しだけ緩んだが、何だか抵抗する力すらも抜けてそのまま私は押えられた状態でおとなしくなった。
一度クールダウンされた頭は時間が経つにつれ正常に戻り、気持ちの方もだんだんと落ち着いてきた。
「まぁ、そのような感情を抱くことが出来るのもこれが最後。
.....お前のためにも、早くその感情を消してやろう」
一層の冷たい声と凍てつく視線が、私を刺す。
シュリの声が言葉を紡ぐその毎に、温度を下げ冷たさが増していくのが分かった。