蒼の王様、紅の盗賊
そしてその紡ぎ出される言葉に帯びる冷たさは、次の言葉で絶頂を迎える。
「――――これより処刑を行う。
衛兵。その女を、罪人アスラを処刑台へ!」
「は....はっ!」
集まる民衆も衛兵も、そして私自身も沈黙を続ける中でシュリが言い放った。
その言葉で今まで止まっていたかのように誰も動く事が出来ずにひっそりとしていた空間が、動き出す。
私の中を掴む衛兵が、動き出した空間にハッとしたように自分より数段上に居るシュリに敬礼をする。
――――グイッ。
そして私の身体は否応なしに、僅か一夜で見事なまでに築き上げられた処刑台へと引き摺られていく。
私の身体は抵抗する暇もなく、民衆のど真ん中―――シュリと同じ目線にある処刑台の上へと上げられた。
この空間に居る者全ての視線がシュリから私へと切り替わる。
一方その視線を一身に受ける私は、少し小高い処刑台の上から辺りをグルリと見回した。
見渡す限り人、人....そして人。
目が眩む程の人が、目の前で行われる私の処刑を―――処刑という名の公開殺人を見物しようとこの空間に犇めき合う。
処刑。
人が殺されるとは言えど、所詮彼等にとっては他人事。
何も知らずにただただ生きる人達の、悪と蔑まれる者達を犠牲にした一種の娯楽に過ぎないということか。