蒼の王様、紅の盗賊
人の命に対する意識が、そこまで腐ってしまったものかと私は心の中で落胆した。
あぁ。
騒めきが遠くに聞こえる。
死はもう目の前。
恐ろしいはずなのに、私の中ではそんな落胆の方が勝っていた。
(.....やっぱり、こんな世界を放っておいたまま――――私は死ねない)
衛兵によって、処刑台に括られる私の身体。
藻掻こうと足掻こうと、もう自力では逃げられない。
時は迫る。
「処刑台の上の気分はどうだい?悪人さん?」
処刑台に上がり、目線が同じになった私にシュリが言う。
冷たい声。だが今度はその中に嘲るような笑いが在った。
気分はどうだだって?
......そんなもの、いいわけがないだろう。
私はそう言いたい気持ちを押し込めて、黙ってシュリを睨み付けた。
「準備完了しました!」
私の身体が、完全に処刑台へと括られた。
きつく締め上げられた身体は、処刑台の柱に押さえ付けられるような形になっていてジンッと痛む。
私の処刑を行う準備をしていた衛兵が、私から離れ取り囲むように並んだ。
甲冑を身に纏った衛兵たちが一列にズラッと並ぶ光景は、何だかとても威容であり異様だ。