蒼の王様、紅の盗賊
〜4〜






「....火炙りだ。火炙りがいい。
あんたたちの前に、惨めに首を晒すなど私は嫌だからな」




シュリの冷たい問い掛けに、アスラは答えた。

処刑台に身体を括られ、死を目前にするアスラ。
そんな状況の中で、彼女は真っ直ぐシュリを見据えた。








「.....自ら長く苦しむ道を選ぶか。物好きも居るものだな。
まぁ、いい。
お前の望み通りにしてやろう。この国を騒がせた"紅の盗賊"にささやかな敬意を込めて」





明らかに敬意の籠もっていない声でそう言うと、シュリは片手をバッと上げる。

するとそれを合図に、アスラを取り囲むように立っていた衛兵達が一斉に動き出す。





何処からか運びだして来た木の枝を、柱に縛り付けられたアスラの足元に組み上げていく。

小さな小枝、大きな枝。
それを何とまぁ練習したかのように見事に堆く積み上げて、アスラを膝元まで埋め尽くした。






「――――火を」



再びのシュリの声に、一人が松明のようなものを片手にマッチを擦る。




―――ポッ。
マッチの先に小さな火が灯る。

その小さな火を衛兵は手に持つ松明にゆっくりゆっくりと近付けて、松明に大きな火が灯った。





ボオォォッ....。

松明へと移った火が、青空広がる正午の広場に音を立てて舞い上がる。
細かい火の粉が、キラキラとした光となって舞う。






 
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