蒼の王様、紅の盗賊
「――――ッ」
火は絶妙に積み上げられた枝の間の空気を頼りに、どんどん燃え広がりとてつもない熱がアスラを襲う。
煙も込み上げてきた。
目も痛いし、呼吸も苦しい。
(熱い.....)
熱気が足元から全身に競り上がる。足元ではとうとう肌に達した炎が、ジリジリと皮膚を焼く。
まさに生き地獄。
熱いを通り越し、激しい痛みがアスラを苛む。
(私は.....このまま死ぬのか)
暑さと痛み。
燃え上がる炎と立ちこめる煙。
アスラの頭の中に"死"という文字が過る。
(私は結局、何も出来ないまま―――.....)
人間、死ぬ間際になると記憶が走馬灯のように流れるというのは本当らしい。
今までの記憶。
苦しかったこと。楽しかったこと。全ての記憶が頭の中を走り去る。
そして、あの消すことの出来ない忌まわしき記憶も。
(ここで私が死んでしまったら、またアイツが.....。
そんなこと、絶対にさせたくはないのに)
甦る記憶。
あぁ。今此処で自分が死んだら、あの記憶が何処かでまた繰り返されることになる。
哀しみが繰り返される。
それは絶対に駄目だ。
そう思っているのに、どうしようも出来ない自分がもどかしかった。
暑さと苦しさが込み上げる中、アスラは涙を溢した。