蒼の王様、紅の盗賊






(.......バルト....。
助けに来ては、くれないのか) 




煙が視界を覆ったか、それとも涙で霞んでいるのか。

何も見えないその先を見て、アスラは求める仲間の名を呼んだ。
だが、それは声にはならずに燃え盛る炎によって掻き消された。










――――ドオォンッ!


炎の中。
意識を手放しそうになったその時、遠くなった意識の中でアスラは唐突に響き渡った轟音を耳にした。




ついに耳までおかしくなってきたか。

そう思うと同時に、今まで下にあったはずの処刑台の地面が崩れ去る。
アスラの身体が宙に浮く。






「.....ッ」


響く轟音。揺れる空間に、アスラの失いかけた意識が戻る。





(.....一体、何が――――)






ドオォンッ! 

意識を完全に取り戻したアスラの元に、再びの轟音と空間を裂くような爆風が襲う。




目を凝らして何が起こっているのか確認しようとするが、何が起こっているのかは分からない。

だが、普通でない何かが起こっていることは確かだった。











「―――――アスラァッ!」



響く轟音。

その中にアスラは、求める仲間の声を聞いた。






「.....ッ、バルトっ!」


煙の中、煙を吸い込み咳き込みながらもアスラは仲間の名を叫ぶ。





 
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