蒼の王様、紅の盗賊
その刹那、何かが物凄い勢いでアスラ目がけて飛び込んでくる。
「アスラッ!」
求める仲間の声が、すぐ近くに聞こえた。
立ちこめる煙。
その中で琥珀のような綺麗な煌めきを放つ二つの瞳を、アスラは見つけた。
「バルト....」
「今助けてやるからな、アスラ」
バルトの手が縛り付けられているアスラの後ろに回る。
アスラを縛り付ける縄は炎に焼け、黒くなっていたが尚も頑強に彼女を拘束し続けていた。
その縄を、バルトは隠し持っていたナイフで切る。
パラパラパラ....。
力なく落ちた縄は、まだ落ちた地面の下で燃える炎の中へと消えていく。
断たれた縄は力を失って、締め上げていたアスラの身体を解き放った。
縄と柱で繋がれていたアスラの身体は拘束を失い、重力に任せ下へと落ちる。
そのアスラの身体を、まだ辛うじて残る処刑台の上に踏み留まるバルトが両腕でしっかりと受けとめた。
「アスラ.....」
自分の腕の中に収まるアスラの華奢な身体を、バルトはフワリと包み込むように抱き締める。
炎に焼かれ、焦げた服。
そして熱気に焼かれ、熱くなったアスラの身体。
全てを受けとめるように、バルトは優しく抱き締めた。