蒼の王様、紅の盗賊






「ちょっ.....」



アスラはその中で、反射的に逃れようとじたばたする。

だが炎に焼かれ痛み憔悴した身体は、力なくバルトの腕の中に収まることしか出来ない。







「遅くなって、ごめん。
でも俺、約束....ちゃんと守っただろ?」



包み込まれる腕の中、バルトの声が響いた。


辺りは煙。
炎の燃える音が遠くに聞こえる。

その中でアスラは抵抗するのを止め、おとなしくバルトに身を任せた。






「一瞬来ないかと思った。
だけど、心では信じてた。ありがとう.....バルト」



「助けるのは、当たり前だ。俺たちは仲間だぜ?





バルトは素直に身を任せたアスラの背を優しく擦る。

いつもならこんなことをすれば蹴りかパンチが飛んでくるのだか、今はただこの空間に溶け込むように二人は燃え盛る処刑台の上に立っていた。






「でも、どうやってこんなこと?
周りは衛兵だらけで、近寄るのだって難しかったはずなのに.....」 



バルトの腕の中。
アスラは顔を上げて、バルトを見た。





「俺、あの衛兵たちの中に紛れ込んでたんだ。そこでアスラを助けるタイミングをずっと待ってた。

で、クロアのおっちゃんたちが仕掛けておいた爆弾と煙幕で混乱させたんだ。
これぞ月読の盗賊団の連携プレーだぜ?」






 
< 211 / 317 >

この作品をシェア

pagetop