蒼の王様、紅の盗賊
ハハッと笑うバルトの顔はいつもと同じヘラッとした子供のようなような笑み。
でも何処かいつもよりも大人びて見えて、アスラは少しだけ赤面して隠れるようにバルトの腕の中に顔を埋めた。
「じゃあ、そろそろここから逃げねぇとな。
また捕まったら、元も子もねぇ」
視界を遮る煙。
この煙の中なら、敵は動きを取れない。
逃げるなら、今しかない。
バルトは腕の中のアスラを離さないように強く抱えた。
「しっかり捕まってろ?」
そしてバルトは踏み留まっていた処刑台の淵から、アスラを抱えたまま飛び降りる。
煙で下は見えない。
だが、怖くはなかった。
「こっちだ!バルト!」
飛び降りる二人に、下から聞き慣れた声が飛ぶ。
煙の中。
見えないその先で、二人を導くその声は。
「おっちゃぁん!」
バルトは声のする方に叫んだ。
――――タッ。
そして着地した二人。
その二人の前に現れた影は煙の中で、手を差し伸べる。
「こっちだ。行くぞ!」
「あぁ、了解!」
差し出された手を取り、アスラを抱えたバルトは煙の中その影を追う。
下に降り、聞こえてきたのはパニックで逃げ惑い叫ぶ人々の声。
そんな声が飛び交う中を擦り抜け、三人の影が風のように駆ける。