蒼の王様、紅の盗賊
『あんたは.....己の過去から逃げてるだけじゃないのか?逃れたい過去から』
『あんたがこの国や世界の正義だと言ってやっていることは、あんた自身がこれ以上傷付くのを恐れて.....自分のやってることをあんた自身の中で正当化して、過去を消そうとしているだけだ』
頭の中で彼女の言葉が谺する。
『国のため、世界のため?
.....笑っちゃうね。あんたは所詮は自分のことしか考えていないんだ』
悪は倒すべきもの。排除すべきもの。
それが正しいと、自分のやっていることは正義だと。
そう思っていたシュリに、彼女はそう言ったのだ。
過去から逃げているだけ。
その彼女の言葉に、シュリは心の深層を見透かされた気分になった。
あの血塗られた記憶。
その時から彼の心の奥底に在り続ける、底のない闇。
それをあの紅の瞳の彼女に全て見透かされた気がして、シュリは心臓が飛び上がるような思いがした。
だが、シュリはその見透かされた事実を認めたくはなくて、その事実を否定した。
『この城に.....そして己の中に籠もり続ける哀れな王様。
そんなあんたが自分は過去に囚われていないと、そう言えるのか?』
でも彼女は言葉を止めなかった。
じりじりと、ゆっくりと核心に迫っていくように紅の彼女はシュリを捉えるのだ。