蒼の王様、紅の盗賊







「.....入れ」



シュリが言った。

そしてシュリは椅子に深く腰掛け直すと、背筋を張りノックのあった扉を見据える。







「失礼致します」



ギイィィッ―――。

扉が開く。
その扉の向こうには案の定、シュリの想像した人物が。



不釣り合いに片方だけが長い灰色の髪。
片方だけ覗く翡翠色の瞳。

髪の間から見える目を覆う眼帯。






「シュリ様。お疲れのところ申し訳ありません。

逃亡した紅の盗賊の討伐の件でお話があり参上した次第です」




扉の向こうに現れた男。
つまりシュリがこの国で今一番の信用を置いている男である、参謀且つ自警団総団長であるレストはシュリの居るその部屋の中に三歩程進み出ると、その場にスッと跪く。

細身だが、しっかりと筋肉のついたレストの体がシュリを前に二つに折り曲がる。









「......顔を上げていい」


「恐れ入ります」




シュリはレストに言う。

すると彼はスッと折り曲げた体を上げ、自らの君主の姿を見た。



上げられた彼の顔。
そこには、いつものような善人のような穏やかな笑みがあった。







「この度の我々自警団の失態。
大変申し訳ありません。

......女とはいえ、相手はあの名の知れた悪党、紅の盗賊。少々油断をしてようです。
恥ずべき失態。どうかご慈悲のほどを」





 
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