蒼の王様、紅の盗賊
お願い。
そのレストの言葉に、シュリはほんの少し顔を怪訝そうに歪める。
「......言ってみろ」
「はい。
そのお願いというのは、新たなる部隊の―――紅の盗賊追討の特別部隊編成の許可を頂きたいのです。
どうやらあの紅の盗賊は一人でなく仲間も居る様子。これを機に奴等を.....今国を腐らせている悪の根幹を一網打尽にしてしまいたいのです。
それには、奴等に対抗する部隊の編成が必要不可欠かと」
レストの声が、部屋の中にいつもより一層低く響く。
密封された部屋の中に漂う低いその余韻。
何だろう。そんな彼は何かいつもとは何処か違うように見えた気がした。
暗い、重い何かを背負っているような。
重々しい闇を感じさせる何かを、シュリは一瞬レストに見た気がしてばれない程度にレストを凝視した。
「......許可さえ頂ければ、後は私が指揮を取らせて頂きます。全てをお任せ下さい。
シュリ様は今まで通り、王としてただその玉座に座ってさえ頂ければ良いのです」
今まで通り。
その言葉が、シュリの胸にチクリと刺さる。
今まで通り。
ただ何もせず城の中に籠もり続けて、ただ王としての仮面を被って玉座の上に座るだけ。
名前や形式上は、シュリは立派な王であった。
だが実際は、王らしいことなど全くしてはいなかった。