蒼の王様、紅の盗賊
「待て。
.....まだ話は終わっていない」
「ッ!?
.......そうでありましたか。私としたことが、とんだ失礼を。
そして、シュリ様。話の続きとは一体何でございましょう?」
話が終わっていない?
いや、そんなはずはない。
いつものシュリのレストの提案に是非を出すという仕事は、もう軍編成を許可した時点で終わっているはず。
そう。
いつもの、今までの彼ならば。
なのに。
なのに今の彼の蒼い瞳には、いつもとは明らかに違う光が宿っていた。
「――――許可をしたのは、紅の盗賊討伐のための軍の編成についてだけだ。
その軍の指揮官についてはレスト、お前が就く必要はない。
お前は通常通りに自警団の兵達を総括し、引き続き自警団の長として逃亡した紅の盗賊の捜索することを命じる」
「なっ.....何を仰っておられるのです、シュリ様。
それでは新たな軍の指揮を取るものは、いかがなさるのです?
お言葉ですが、今のこの国に私以外に軍の長を務められるような力量がある者が居るとは.....思えませぬ」
彼は....レストの前に居る蒼い瞳をした少年王は、もういつもの城に引き籠もり自分自身の殻に閉じこもっていた彼ではなかった。
ほんの数日前まで。
彼は長い間、頑なに自分自身から逃げ続けていた。
王と言うのは世間の上だけで、実際はただの非力な一人の少年であった。
そのはずなのに。