蒼の王様、紅の盗賊
「.........確かに今のこの国を守る兵達の中には、お前以上に人をまとめ上げる才がある者は居ないだろうな」
「でしたら、やはり此処は私が――――」
レストの言葉に、シュリの肯定の声が響く。
その声に、驚きと戸惑いがどうしても隠し切れずに居るレストの顔に、何処か安堵したような表情が戻る。
「.....だが!」
だがその安堵は、レストの言葉を遮るシュリの強い否定の言葉にすぐに立ち消えた。
明らかにレストの顔から、笑みが消え失せたのが分かった。
片方だけの翡翠色の眼光が、鋭く光りシュリに向く。
「だがそれは兵の中でのこと。
......兵でなくとも、指揮を取れる」
シュリの声が、やけに大きく閉ざされたこの空間に谺した。
そしてその声は、続けるように発せられた声と重なり、より一層響きを増す。
声の余韻が空気に留まるように、この空間を支配する。
「..........指揮は俺が取る。
この手で奴を、紅の盗賊をもう一度捕まえてみせる」
「なっ.....」
「異議は認めない。
これはこの国の王である私、シュリからの命令だ。
.....話は以上だ。
もう行ってもいい」