蒼の王様、紅の盗賊






「.....っ」 





レストは何かを言おうとした。

だが、言えなかった。



目の前に居るこの少年王が醸し出す有無言わせぬ雰囲気が、そして彼が年満たぬ少年であることを忘れさせる程の底知れぬ威圧感。

それを前に、レストは黙ることしか出来なかった。











「...........了解致しました。シュリ様」



シュリの言葉に、声すら出せないレスト。
そんな二人の間に暫しの沈黙が流れ、そしてレストが口を開く。






「.......それでは私は軍編成の任があるます故、失礼致します」



そう言い残し、レストはいつもとは違う威厳ある主の姿を前に一礼した。

そしてまたシュリに背を向けると、今度は止められることも振り返ることもせずに閉ざされた扉に手を掛けた。







「失礼致します」



大きく重々しい扉を開き、レストは一度だけシュリの元を振り返り再び一礼をすると、そのまま部屋を後にした。





ギイィィ....バタンッ。

そして僅かな時差を経て、閉ざされる扉。



一人残された部屋の中。

耳鳴りのするような静けさに、シュリは決意に耽るように、ただ一点だけを見つめていた。





 
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