蒼の王様、紅の盗賊
〜2〜





カツッカツッ。

カツッカツカツッ。



カツカツッ.....カツンッ。





夜の闇更ける城の廊下。

王の私室や謁見のための王の間がある城の本棟から、兵舎などがある別棟へと続く渡り廊下。



白く磨き上げられた大理石の床に、長い半円を描いて続くアーチの壁。

左右に連なるアーチの向こうはもう外で、夜の風が吹き抜けて少しだけ肌寒い。
アーチの間から覗く夜空には、控えめな光で輝く月があり、城に灯された灯りに彩りを添えるように煌めいている。





そんな廊下に靴音を響かせる一つの影は、続く廊下の真ん中辺りで不意にその足を止めた。










「........あのシュリ様が、よもやあのようなことを言い出すとは」



城の灯りと月明かりに照らされ、廊下に伸びる影―――つまりレストは、信じられないと言ったように自分以外誰も居ない空間に呟いた。




眉間に皺を寄せ、何処か機嫌の悪そうに顔を歪めるレスト。

そんな彼の姿に、自警団の団長として兵をまとめ国を守る勇ましい姿も、そして参謀として王であるシュリに仕える忠実な臣下としての姿の面影はない。







「あれほどまでに自ら人と関わることを拒み、自分に閉じこもり続けていたシュリ様が.....自ら指揮を取るなどと言い出すとは」





 
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