蒼の王様、紅の盗賊
〜3〜
「アスラは......あの子は生きておったのか」
ボロボロの廃墟の影が月明かりに、細く長く地に浮かぶ。
地を滑るような風が吹き、空気に砂埃が舞う。
澄んだ夜の空気が、少しだけ砂色に濁った。
「よかった.....本当に、よかった」
そして流れる、皺の寄った老いぼれた目尻から伝う一筋の涙。
喜びとも違う。
悲しみとも違う。
それは安堵から来る涙だった。
月夜に伸びる人影。
老いぼれた、一人の老人。
ジルという名のその人は今、心の底から沸き上がる安堵感を噛み締めていた。
彼女が死ななかった。
彼女が、生きて戻ってきた。
あの死の処刑台の上から、彼女が生還した。
あぁ、これほど嬉しいことがあるだろうか。
今まで神というものの存在を信じたことは無かったが、ジルは今日初めてその存在を実感した。
彼女――――アスラは、一年程前にジル達の元に突然姿を現した少女。
街から外れた、ボロボロの廃墟に棲み着く害虫。
誰もが、ジル達のことをそう蔑んでいた。
人として生きては行くことを許されず、ボロボロの廃墟の隙間から吹き抜ける冷たい風に身を寄せ合いながら、野に生える草で飢えを凌いでいた。
そんな時だった。
アスラが此処へと、ジル達の元へとやってきたのは。
「アスラは......あの子は生きておったのか」
ボロボロの廃墟の影が月明かりに、細く長く地に浮かぶ。
地を滑るような風が吹き、空気に砂埃が舞う。
澄んだ夜の空気が、少しだけ砂色に濁った。
「よかった.....本当に、よかった」
そして流れる、皺の寄った老いぼれた目尻から伝う一筋の涙。
喜びとも違う。
悲しみとも違う。
それは安堵から来る涙だった。
月夜に伸びる人影。
老いぼれた、一人の老人。
ジルという名のその人は今、心の底から沸き上がる安堵感を噛み締めていた。
彼女が死ななかった。
彼女が、生きて戻ってきた。
あの死の処刑台の上から、彼女が生還した。
あぁ、これほど嬉しいことがあるだろうか。
今まで神というものの存在を信じたことは無かったが、ジルは今日初めてその存在を実感した。
彼女――――アスラは、一年程前にジル達の元に突然姿を現した少女。
街から外れた、ボロボロの廃墟に棲み着く害虫。
誰もが、ジル達のことをそう蔑んでいた。
人として生きては行くことを許されず、ボロボロの廃墟の隙間から吹き抜ける冷たい風に身を寄せ合いながら、野に生える草で飢えを凌いでいた。
そんな時だった。
アスラが此処へと、ジル達の元へとやってきたのは。