蒼の王様、紅の盗賊






日々の現実に絶望して、世界が色褪せて見えた時。

そんな時、鮮やかな紅を纏ってアスラはやってきた。




紅の彼女。
初めて会った時、アスラはジル達の前に立ち、凛とした声で言った。




『私が貴方達を助けよう』


助ける。
今まで誰もジル達を蔑み、時には見て見ぬ振りをして掛けなかったその言葉。

その言葉を、彼女は凛としたその声でサラリと言ってのけた。



求めていた、でも漠然としたその言葉を言うアスラにジル達は初めは戸惑い疑った。

通りすがりの旅人が自分達を哀れんで、気紛れで偽善の言葉で自分達を惑わしているだけなのだ。
ジル達は、正直この時はそう思っていた。






『......名乗るのが遅れた。私の名はアスラ。
月読の盗賊団の一員。大丈夫、私は貴方達の味方だ』


疑いの視線。
そんな視線を感じてか、アスラは言った。







月読の盗賊団。
ジル達には、聞き覚えのない言葉だった。


ただ彼女の口から零れた盗賊という単語に、ジル達は反射的に身を強ばらせる。
盗賊というのは、この時の彼等の中では"悪"というイメージしか無かったからかもしれない。








『........私達は他の盗賊の輩とは違う。

私達は、この世を乱し蔓延り.....それを正義だと偽って私腹を肥やしている奴等から、弱い者達を救うために結社した。
盗賊という名を持って、悪を食らい正義を貫く盗賊団。

どうか、警戒しないでほしい』





 
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