蒼の王様、紅の盗賊
ジルは、覚悟を決めて閉じていた瞳を開いた。
「此処に紅の盗賊が出入りしていたという情報が入った。
言え。紅の盗賊と、どのような関係があった?
知っていることを全て言え。隠すと為にならんぞ?」
若い衛兵の男が、腰にある剣の柄に手を掛けて言う。
あぁ、やはり。
何処からか情報が漏れたか。
此処で下手に答えれば、悪人に手を貸したということになり、この廃墟に居る者達は罪に問われることになるだろう。
もちろん、子供たちも。
......そんなことになっては、絶対にいけない。
守らなければならないのだ。
子供たちを。アスラが彼等を庇って守ったように。
「.......あぁ、確かにあの者は此処に居った」
剣の柄を掴み牽制するように尋問する兵に、ジルは落ち着いた面持ちで彼等を見て答える。
「フッ.....やはりな。
言え。お前達は奴等とどのような関係だ?
紅の盗賊の逃走の手引きをし、民衆を混乱に陥れたのはお前達か?
さぁ、正直に答えろ」
キイィンッ。
衛兵は鼻で笑い言うと、手を掛けていた剣の刃を少しだけ鞘から引き抜いた。
握られた柄と鞘の間から、銀色に鈍く光る刃がギラリと嫌な輝きを放つ。
脅しのつもりなのだろう。
全く、最近の若者はすぐに力に奔る。