蒼の王様、紅の盗賊
その離れの建物は、さすがに城ほどは広くはないがそれでも充分なスペースがある。
部屋が幾つかに別れていて、寝泊りなど生活するには丁度いい。
いつ崩れるか分からない城の中で寝泊りするよりはずっと安全で、此処を拠点とするクロアたちはその離れの建物で寝泊りをしていた。
カツンッ。カツンッ。
澱んだ大理石の床に靴音を響かせて、レイアは長い廊下を進む。
崩れ掛けたアーチの外側には鬱蒼とした森があり、その森の中を切るようにして廊下が伸びている。
森の木々の騒めきが、廊下を一人進むレイアの鼓膜を心地よく震わせた。
カツンッ。
暫らくそんな雰囲気を楽しみながらゆっくりと歩き、廊下の先にある目的の扉まで辿り着くとピタリと足を止めた。
......トントンッ。
そして一息置いてから、レイアは静かに目の前の扉をノックした。
返事を待つ。
だが、返る言葉はない。
「.......入るわよ」
暫らく返事を待つ。
それでも返事のない扉に、レイアはほんの少し瞳を伏せて、それから取っ手に手を掛けた。
――――ギイィィ.....ガチャンッ。
扉が開き、そして閉まる音が響く。
音は空気を震わせ余韻を残して、暫らくして消えた。