蒼の王様、紅の盗賊
中はシンッと静まり返り、人の気配は感じられない。
静かな空間。
静寂故のノイズが、レイアの耳に付き纏う。
カツンッカツンッ。
耳から離れないノイズを煩く思ったか、レイアは光沢のある薄い紫色の髪を軽く左右に振る。
そしてこの静かな空間を、靴音で掻き消しながら奥の扉へ向かう。
扉は一階に二つ。
二階に二つある。
一応ではあるが、レイアにクロア.....そしてバルトにアスラの四人の部屋に別れていた。
そのうちの一つ。
レイアの足がまっすぐ向かっているのは、一階にある部屋の一つのアスラの部屋だった。
――――カツッ。
扉の前で足が止まる。
そして扉の取っ手にレイアは手を伸ばす。
「.......」
手を伸ばし、取っ手に触れるか触れないか。
そこでレイアの手は一瞬何かを躊躇うように止まる。
.......ギイィィ。
だがその戸惑いはほんの一瞬で、レイアは何か意を決したように扉に手を掛けそのまま開いた。
部屋はたいして広くはない。
家具も備え付けられている衣裳ダンスとベッド、あとは壁に立て掛けられた全身を見ることが出来る鏡くらいのもの。
造りは至ってシンプルで、乳白色の壁に部屋を彩る灯籠が温かな色を添える。