蒼の王様、紅の盗賊
バルトは言葉を喉の奥から押し出すように、苦しげに言う。
そして一旦言葉を切り、アスラを見つめ続けていた琥珀色の瞳を伏せた。
「たとえ俺達の傍に居ても、アスラはいつも何処か俺達と違う場所に居る。何か見えねぇ壁みたいなものを俺達との間に作ってる。
......傍に居ても、アスラは俺達と同じ空間に居ることを拒絶してるんだ。
だからこそ、俺はそんなアスラをどうにかして守ってやりたいと思うのに、どうしてもそれが出来ねぇ」
「.......」
「こんなに、もどかしいことがあるかよ......こんだけ情けねぇことあるかよ。
どうすりゃいい。
教えてくれよ。俺は、一体どうすりゃいい」
それからバルトは座っていた椅子から雪崩込むように落ち、床に膝を突いた。
身体は前に傾き今にも倒れてしまいそうなところを、手を突っ張ってその体勢を保つ。
バルトは床を見ていた。
床に落ちた自分の涙の滴を、そしてその滴に映る自分の泣き顔を。
「............バルト」
そんな彼を前にレイアは何も言う言葉が出てこない。
床に伏す彼に合わせるように自分も膝を突く。
彼のアスラを想う真っ直ぐな心。
それに見合う言葉が見つからなくて、レイアは彼の名を呼び彼の背を擦ることしか出来なかったが、暫らくそのままで居た。