蒼の王様、紅の盗賊








静かすぎる部屋に、バルトの嗚咽と吐息だけが響く。



レイアはその中で彼の背を擦り続けた。



まるで泣く子を宥める母のよう。

だが、彼女の擦るバルトの背は肩幅もあり広い。
まだ子供だと思っていたのに、彼の背はもう大人の男の背だった。

守るべき者を持った、大切なものを知った強い男の背だった。












「.......ごめん、レイア。
こんな、泣くつもりなんて、なかったのにな」




暫らく泣いて落ち着いたのだろう。

俯いたまま服の裾で涙を拭うバルトはレイアの居る前でこんなに泣いてしまったことに今更ながら気が付き、ハハッと枯れた声で笑いながら言った。








「......そうね。
貴方は身体は大きく成長しても、中身はまだまだ子供みたいだわ」



レイアがそう言って、穏やかにクスリと笑う。







「でも、それが貴方の良いところでもあるわ。
いつまでも変わらない、そんな貴方の心が。

........人というのはいずれ変わってしまうものだけど、貴方のようにいつまでも変わらずに居てくれる人が居ると周りの人は安心するものよ」



「........そういうものかな?」



穏やかな彼女の言葉にバルトも心なしか落ち着いたようだった。

気が付けば涙は完全に消えてレイアを見ていた。
まだその目は、泣いたせいで赤かったけれど。
 


それでも自分を見る琥珀色の彼のそんな瞳を見て、レイアは純粋に綺麗だと思った。

 





 
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