蒼の王様、紅の盗賊







廃れた翼。
それはもう二度と明るい世界には飛び立てない。そんな、人々からのそして世界からの宣告。






そんなレッテルを貼られた俺達は、開き直るかのようにより一層悪行に身を染めた。

もう飛び立つことが出来ないのなら、いっそ本当に這い上がれない所まで堕ちてしまえ。
これが俺達の、世界に対するせめてもの反抗だったのかもしれない。










悪への衝動。
今の悪では物足りなくなって、悪を重ねて快感を得る。

それは重ねるごとに、どんどん膨らみ大きくなって俺はまた快感を求め悪行を重ねる。





だがそんな中でも、不意に本来あるべき人に返る時があって罪悪感に苛まれて俺は自分を嫌悪する。


まっさらになりたい。
ちゃんと、人として生きたい。

俺の中には常にそんな願望があって、でもそれを表に出すことは叶わない。
俺は叶わない願望に失望し、いつもその願望の上に悪という闇を被せて隠し続けていた。







そう。
あの日の出来事も、俺が塗り重ねてきた悪行のうちのたった一つだった。



ただいつものように、仕事をこなす。
己の欲を満たすために金目の物を片っ端から漁り、邪魔する奴は躊躇いもなく皆殺した。



この日の俺達のターゲットは小国の城。

ちょうどその国の王女の誕生の祝い事があったらしく、城は祝福の色一色だった。


王女を祝福するために訪れる国民、招かれた来賓.......人の行き来が多いこういう日は俺達にとってこの上ない程の狙い目。
俺達は難無く客人に紛れ込み、城の中へと潜り込み機会を伺った。








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